あなたには、死んでまで守りたいと思う想いや信念がありますか?
このドラマは、それを必死で訴える人たちの物語です。
一言で言うと、内容自体は重いのです。しかし、とても味わい深くて面白いドラマですので、是非見ていただきたいです。
このドラマは、フィラデルフィアを舞台に、女刑事リリー・ラッシュ(キャスリン・モリス)が未解決事件(コールドケース)を解決していくドラマです。アメリカは、日本と違い殺人事件に時効がありませんので、アメリカならではの物語といえるかもしれません。
リリーたちのもとに舞い込む未解決事件は、時代背景も、またそのきっかけも様々です。たまたま白骨解体が発見された事により、捜査を余儀なくされる場合もありますし、被害者の孫や両親から解決を依頼される時もあります。事件当時を振り返るときは、事件の時代背景に合わせて、画面が白黒になったり、建物や自動車、ファッションもその当時の流行の服だったりと趣向が凝らしてあるので、自然とその時代に入り込むことができ、事件そのものよりも「あの時代はこんな事が流行っていたのか」と楽しむ事も出来ます。
あの禁酒法時代のエピソードなどもありました。
また、このドラマの最大の魅力は、登場人物たちの心理描写にあります。
まず、主人公リリーと彼女の同僚たち。彼らもそれぞれに悩みを抱えています。リリーは自身の幼少期のトラウマから、母親という言葉に敏感に反応します。また、相棒のスコッティも幼少期のある事件以来、児童への性的虐待という言葉には過剰に反応してしまいます。物語は、未解決事件の解決とともに、リリーたちが心のトラウマとどう向き合っていくかにも焦点を置いています。そして、なにより主人公のリリーがかっこいいのです。まさに働く女性。細身のスーツを着こなして、コートを靡かせて歩く姿は本当に美しく、時に辛辣な尋問で加害者を追いつめたかと思えば、女性特有の優しさで加害者を慰める時もあります。ちなみに、インタビューで、リリーを演じた女優さんが「リリーは女性には人気があるけど、男性には人気がない」とおっしゃっていましたので、視聴される際はそちらも念頭に置いてご覧になってみて下さい。
とは言っても妖怪かも?
と、思ってしまうほど綺麗な女優さんです。
次に、それぞれの被害者や加害者たちの真の想いです。基本的にドラマは一話完結型ですので、各話毎に違う登場人物が登場します。彼らは、「今だからこそ話せる事」をリリーたちに語ります。また、彼女らもそんな加害者たちの心にそっと寄り添います。このドラマの特徴として、基本「被害者はすでに死んでいる」という事実があります。なので、リリーたちは、加害者の話や事件当日の行動から、被害者の真の願いを紐解いていくわけです。
また、このドラマには、正直目をそむけたくなるような描写が多々でてきますが、だからこそ見てほしいドラマでもあります。例えば、私たちが教科書でしか知らないような、人種差別や戦争のあった時代を、このドラマは鮮明に描いています。そういった時代を生きぬいてきた人達がまだいるという事は、偏見や差別があった時代がまだ最近であると見せつけられているような気分になり、何とも言えない気分になります。「こんなのおかしい」と素直に思える時代に生まれてこられて、よかったと思えます。
「仕方ないだろ。そんな時代だったのだ。」
これは、ある事件で何故想いを寄せていた黒人の女性を助けなかったのかを問われた白人男性が言った言葉です。この一言が、その時代背景のすべてを表しているように思えます。
また、現代に生きるアメリカ少数民族の先住民たちのエピソードなどもあります。アメリカの現代社会において、文明とは無縁の生活を送る人たちのお話ですが。
「本当にこんな事が現代のアメリカにおいてあるのか?」と、疑問に思いいろいろ調べたぐらいです。
それに加え、このドラマでは被害者の多くが「いい人」なのがまたつらくて切ない所です。黒人差別をなくそうと翻弄した白人女性だったり、自分の道を貫き通そうとした女子高生だったりと、彼らなりの想いが事件の裏には必ずあったのです。そんな彼らの姿を見ていると、自然と自分も頑張ろうと思えます。
様々な思いが交錯して、すれ違い、結果起こってしまった事件の核心に、リリーたちが迫っていく緊迫感を是非堪能して下さい。
その時代時代に大流行した音楽やその時代を代表する音楽などがBGMとして流れ、とても印象的です。それらの往年の名曲のために著作権がらみでDVD化されないようです。
こんなに、大ヒットしているすばらしいドラマなのに。
ちなみに私はCSのAXNで録画して吹き替え版を全話二回観ました。
BS258のDlifeでも現在、放映しているようです。
huluやNetflix、dTV、U-NEXTなどのオンライン配信動画サービスなどでも配信はしていないようです。