アメリカはアルバカーキに暮らす高校の化学の教師ウォルター・ホワイト。
高校教師といっても、生徒はだれも真面目に彼の授業も聞かないヘボ教師。
家では二人目の子を妊娠中の妻スカイラーと脳性麻痺の生涯を抱えた息子ジュニアの3人暮らし。
生活はつつましく、洗車会社でアルバイトもしている。
スカイラーは家計の足しにネットオークションをしている。
スカイラーの妹マリーの夫ハンクは麻薬取締局の捜査官。
そんな環境の中、ウォルターはアルバイト中に倒れ、自分ががんに侵されていることを知る。
そして義理の弟の麻薬の捜査に立ち会った時、自分がかつて教えていた生徒が麻薬に関わっていることを知る。
ウォルターは、余命を考え、家族にお金を残すことを考えるようになる。
そしてそれはかつて自分が化学の天才ともてはやされた時代をもう一度取り戻すためでもあった。
教え子のピンクマンを脅し、クリスタルメス(覚せい剤)の生成を手伝わせる。
そして、ピンクマンのつてで裏ルートの売人と闇取引をすることになるが、そこから数々のトラブルに巻き込まれていくことになる。
最初は恐々売人とやり合っていたウォルターだが、がんが進むにつれて頭を剃ったことで、悪人たちも一歩引く風情になり、彼は自らを「ハイゼンベルグ」と名乗り、アリゾナの影の麻薬王になっていく。
そのころから、家族にお金を残す目的でメスを製造密売していたのに、いつの間にか、彼自信の生きる力にもなっていった。
当然、妻はおかしいと思い始め、疑い、ウォルターを責める。
そこでがんのためにだったことを話し、しばらく妻をだますことになる。
妻も家計を助けるために昔の会社にまた会計士として働き出す。
しかし、夫の行動の不信感から上司と浮気をしてしまう。
妹夫婦も、外見は明るくて楽しくて頼り甲斐のある家族だが、妹は万引きの癖が抜けず、ハンクも捜査では強気を見せているが、ナイーブな精神を持っていて、それはのちに破綻をきたすことになる。
相棒のピンクマンは、非暴力の心優しい売人で巻き込まれタイプの人間だ。
ウォルターに巻き込まれ、逃げ出すこともできず、大金が入って、仕事から足を洗おうと思っても、両親からは疎まれ、なんだかんだ言ってもウォルターを尊敬している。
それは最後のシーズンまで二人の関係が続くことにも表れている。
ウォルターの周りにいる人間だけでも、これだけのキャラクターがそろっている。
一応善人のチームと、それからシーズン5までに次々に出てくる悪人チームも、こちらもキャラクターが優れている。
悪人と善人の間に位置する悪徳弁護士ソウルとマイクなども、キャラが際立っている。
その後弁護士ソウルは「ベターコールソウル」というスピンオフドラマにもなっている。
ブレイキングバッドはシーズン3からラストで最大級の盛り上がりがある。
多分、一番の悪人ガスとの対決がすごい見せ場だ。
フェイスオフというタイトル通りのガスのエンディングになっている。
このシーズンあたりは映画にも劣らぬ素晴らしい脚本で、この作品がエミー賞、ゴールデングローブ賞を受賞したのも納得だ。
当初、妻のスカイラーがうっとおしくて、そりゃウォルターも逃げ出したくなるよな、とおもいつつ見ていた。
そのうち、ウォルターの方がどんどん悪人になっていくあたり、スカイラーとの駆け引きがまた引き込まれる。
スカイラーの恐怖もひしひしと感じるし、といって、最後は夫の味方になるのかどうなのかのあたりの演技の上手さにもうなるものがある。
監督は、無名の俳優だけでキャスティングしたかったとのことで、私も知っていたのはハンクぐらいだった。
そのせいか、役者にかき回されることなく、じっくりこのドラマに入ることができた。
そうそう、イケメンがほとんど出ないドラマだったのも、よかったのかもしれない。
せいぜいピンクマンかジュニアくらいしか、若い男も出なかったし。
若い女性はたった一度ピンクマンの彼女がいたが、すぐ死んじゃって、男性ファンはがっかりだったかも。
恐ろしく綿密な脚本とキャラクター設定、俳優陣の上手さ、アルバカーキという土地とその映像の美しさ、音楽のセンスの良さ、多分ここ数年のドラマの中では最高峰だと思う